top of page

夜を呼ぶ祭囃子

◇ガラガラガラ…と扉が開く ゆっくりと畳を歩く音が近づく

少年「あ、いたいた。 やっぱりまだ寝てたんですね」

少年「お姉さん、お姉さんってば。 起きてください」

◇ごそ、と体を起こす音

少年「あれ…?なんでここに?…じゃないですよ、もう。 約束の時間になってもお姉さんこないし、連絡もないから心配して迎えに来たんですよ」

少年「もしかして、忘れてたんですか?」

少年「…ぷっ、あはは! そんなに力いっぱい弁解しなくてもわかってますよ。しっかり浴衣に着替えてる、その姿を見ればね」

少年「でも、せっかくの綺麗な浴衣が着崩れしちゃってますよ? ほら、体起こして。直してあげます」

◇浴衣を直してあげながら

少年「おばさんに着つけてもらったんでしょう? この前お願いするって言ってましたもんね。 浴衣もたしか新しく買ったんでしたっけ。 月と金魚、それに白地に青のさし色が綺麗な浴衣ですね」

少年「ん?なんですか? すみません、よくきこえなくて… もう一度言ってもらえますか?」

少年「!あぁ… ふふ、もちろん、よく似合ってます。 ここへ来たとき、すごく綺麗でびっくりしちゃったくらいです」

少年「お姉さんのうなじ、とてもきれいだし、お姉さん可愛いし、当たり前と言えば当たり前ですけど…ちょっと心配かな」

少年「だって、はたから見たら僕はお姉さんの弟にしか見えないだろうし… こんな姿、ほかの男の人が見たらきっとお姉さんを好きになっちゃう」

少年「だから約束してくれますか? どんな男の人に迫られても、ちゃんと僕だけを見てて? 僕はいつだってお姉さんしか見てないんですから。ね?」

少年「ふふ、約束ですよ? 破ったら、お姉さんのこときっといじめちゃいますから。…泣いちゃうくらいに、ね」

少年「…なんてね。はい、できた! どうですか?おばあちゃんに教わっておいたんです、女物の着付けのやり方。もちろん、お姉さんだけのためにね」

少年「…え?どうしたんですか?いきなり… おねえさんが自分から僕に「すき」って言うなんて、めずらしいですね」

少年「…僕? 」

◇ちゅ、とキスをする

少年「もちろん、僕もお姉さんが大好きですよ。 さ、もう始まってる。お祭り、いきましょうか」

bottom of page