声優
羽柴ゆい
同人声優として活動している羽柴ゆいの公式HPです。
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図書館と夏休み
◇紙をめくる音。しばらくして閉じる。
少年「ふう… 適当に選んだ本だったけど、結構面白かったなあ」
少年「ん? あれ、君も来てたんだ。 俺はこれ、夏休みの宿題があと読書感想文だけだからさっさと終わらせちゃおうと思って。 君も?」
少年「もう感想文だけなの、って… 君はまだやってないの? もしかして苦手なものは後回しにするタイプだった?」
少年「はは、まあいいや。 ところで、読む本はもう決めた?」
少年「そうなんだ。 だったら、この本お勧めだよ。 文体もわかりやすいし、読みやすかったから」
少年「俺? ああ、俺はもう読んだし、一度読んだら大体の流れは覚えてるから大丈夫。 感想文書く分には困らないよ」
少年「ふふ、どういたしまして。 あ、よかったらここ座ったら? その本があった棚も近いし」
少年「どーぞ。 じゃあ俺感想文書くから」
◇かりかりと文章を書く音。
少年「ん?なあに? 読めない字でもあった? ああ、それはヨヒラのハナって読むんだよ。紫陽花のことだね」
少年「あはは、なんでも知ってるわけじゃないよ。 ただ、前に読んだ本に出てきた時、俺もわからなくて調べたからわかっただけ…だから知ってただけ」
少年「本っていいよね。 そこには、今までの自分が知らなかった言葉や現象、心情、そういうものがバランスよく詰め込まれている。 だから、読んでいる間はまるでその物語の一部にでもなれたようで、ふわふわするというか…不思議な、でも心地いい、そんな気分になる」
少年「…変だと思う?」
少年「ふふ、なんとなくわかる…か。 それは、ちょっとうれしいかも。 今まであまり話したことなかったけど、もしかしたら君とは気が合うかもしれないね。 もっと… いろいろ、ゆっくり話してみたいな」
少年「君も? じゃあさ、お互い宿題が終わったら一緒にかき氷、食べに行かない?」
少年「そう、かき氷。 駅前に美味しいお店ができたってクラスの女子が噂してたのを聞いたんだ」
少年「あ。 甘いものは苦手、だった?」
少年「ふふ、それならよかった。 今日も外は暑いし、きっとすっごくおいしいよ。 さ、読書感想文の宿題がんばろっか」
少年「ん? ああ、もちろん。 また読めない漢字があったらいつでも聞いて? 君が終わるまで俺はここに、君の隣に座ってるから」
少年「うん、もうひとふんばりだ。 がんばろうね」